
独立・開業は夢への大きな一歩です。
しかし、その先に待っているのは“収入の不安定さ”という現実です。
事業が軌道に乗るまでの数ヶ月、あるいは1〜2年は売上が不安定、もしくは赤字続きになる可能性もあります。
だからこそ、独立を考える前に「家計の守り方」を徹底的に考えておくことが、事業継続のカギになります。
この記事では、独立開業を目指す方向けに、具体的な家計の管理方法や制度、資金対策を紹介します。
生活防衛資金は6か月分が必須
独立後の収入は予測が難しく、月によってゼロ〜大きな波が出ることがあります。
サラリーマン時代のような安定した入金は見込めないため、最低でも【生活費の6か月分】を防衛資金として確保しておくべきです。
たとえば、生活費が月20万円の人であれば、6か月分=120万円。
このお金は「事業資金」とは完全に分けて、あくまで生活のための“保険”として現金で保持します。
資金の使い道が混在してしまうと、収支の把握が難しくなり、気づかないうちに生活費が足りなくなるリスクがあるため、別口座に管理するのが理想です。
固定費の見直しは命綱
事業の売上が不安定でも、生活費が一定であれば家計は耐えられます。
逆に、固定費が多いと、売上が少ない月にすぐ資金ショートする可能性が高まります。
そこで重要なのが、固定費の徹底見直しです。
以下に、具体的な削減対象と見直し方の例を挙げます。
費用項目 | 見直しポイント |
---|---|
家賃 | 現在の収入見込みに応じて適正化。高額な物件なら引っ越し検討。 |
通信費 | 格安SIM+光回線セットなどで、月5,000円以上の削減も可能。 |
保険 | 所得補償保険や医療保険などは、必要最小限に絞る。 |
サブスク | 本当に使っているかを精査。月5件→2件に減らすだけで大きな差に。 |
車 | 通勤が不要であれば売却+カーシェアで維持費を大幅削減。 |
これらの工夫で、月2〜6万円の固定費削減は十分に実現可能です。
年間で最大72万円近くのキャッシュフロー改善になります。
この資金を生活防衛資金の補填や、事業投資に回すことができます。
予算の立て方:事業と生活は完全分離

最も重要なのが、【事業のお金】と【生活のお金】を“完全に分ける”ことです。
これをしないと、事業がうまくいっているのか、生活が逼迫しているのかが見えなくなります。
以下のように分けましょう。
口座を分ける
- 事業用口座:売上・経費・税金を管理(事業用クレカ・会計ソフト連携)
- 生活費口座:家賃・光熱費・食費など家計管理用
- 予備資金口座:生活防衛資金などの緊急時用
事業と生活を混在させると、事業の赤字を生活費で補ってしまい、資金繰りが悪化します。
一方、生活資金が尽きると、無理な営業や価格設定をしがちで、長期的な事業の健全性を損なうことになります。
だからこそ、物理的な“口座の壁”を作ることが第一歩です。
予算を数値化する
【例:月15万円で生活する場合】
- 家賃:8万円
- 食費:3万円
- 光熱・通信:2万円
- 保険・その他:2万円
→ 年間合計=180万円
この予算内で生活を完結させ、必要があれば事業から「生活費」として定額を送金します。
売上が上振れた月でも、生活費を増やさない仕組みにするのがポイントです。
■生活費に上限を設けると、必要以上に生活水準を上げずに済みます。
また、定額送金は「給料」としての役割を持ち、事業の運転資金を確保する上でも有効です。
独立開業で使える助成金制度 3選

1. 小規模事業者持続化補助金
- 商工会議所・商工会を経由して申請
- 販路開拓(チラシ・HP作成など)に最大50〜100万円補助
- 補助率は2/3(例:75万円の支出→50万円補助)
2. 東京都 創業助成事業(他都道府県でも類似あり)
- 創業2年未満の法人・個人事業主が対象
- オフィス賃料・人件費・設備導入費に最大300万円
- 東京都以外でも、各自治体の創業支援事業をチェック
3. IT導入補助金
- 会計ソフト、顧客管理システム、ネットショップ導入などに活用
- 補助上限額は最大450万円(事業類型により異なる)
- 年によって対象ソフト・制度変更あり。事前チェック必須
“お金が出ない仕組み”を作る
収入が安定しないからこそ、「出費を予防する工夫」が最大の守りになります。
具体的には:
- デビットカードやプリペイド式カードで使える金額を制限
- 家計簿アプリで週1回の支出チェックを習慣化
- 必要な支払い以外は「毎月の送金額」で管理し、引き落としを一本化
- 医療費・臨時費は年に1度、上限10万円と決めて積立ておく
「使えるお金」に上限があると、心理的にもブレーキがかかりやすくなります。
まとめ:事業と家計を“分けること”が最大のリスク対策
独立開業における家計管理は、単なる節約ではなく「戦略的なリスク管理」です。
事業の赤字を家庭に持ち込まないこと。
生活の不安定さを事業の判断に影響させないこと。
そのためには、
- 生活防衛資金6か月分の確保
- 固定費の最小化
- 予算を決めた生活の徹底
- 生活と事業のお金を完全に分離
これらを事前に徹底することが、事業を継続・成功に導く第一歩になります。
独立は自由と責任が表裏一体です。
まずは「守り」を万全にして、安心して夢を追える土台をつくりましょう。