
家を買いたい。でも教育費も心配。どうバランスを取る?
「子どもが小学校に上がる前に家を買いたい」
「でも、これからどんどん教育費もかかる…」
こうした悩みは、子育て世帯の相談でとてもよく耳にします。
住宅ローンは35年という長期の支払い。
一方、教育費も子ども1人あたり1,000万円以上かかるとも言われます。
どちらも大切な出費ですが、順番や配分を間違えると、家計がじわじわと苦しくなる危険も。
今回は、「教育費と住宅ローン、どっちを優先すべきか?」について、FPの視点から整理していきます。
教育費はいくらかかる?子ども1人のリアルな総額
まず、教育費の全体像を把握しておきましょう。
文部科学省などの統計によると、子ども1人あたりにかかる教育費(学校+塾+その他費用)は次のようなイメージです。
教育段階 | 公立 | 私立 |
---|---|---|
幼稚園 | 約70万円 | 約150万円 |
小学校 | 約200万円 | 約900万円 |
中学校 | 約150万円 | 約400万円 |
高校 | 約150万円 | 約300万円 |
大学(4年) | 約500〜600万円 | 約700〜900万円 |
※入学金・授業料・通学費・塾などすべて含んだ目安です。
つまり、公立中心でも合計で約1,000万円〜1,200万円程度。
私立中心なら2,000万円を超えるケースも珍しくありません。
しかもこれは「子ども1人分」の金額です。
兄弟姉妹がいれば、さらに大きな負担になります。
住宅ローンの落とし穴:無理な借入は未来を圧迫する
一方、住宅購入の費用はどうでしょうか?
たとえば、3,500万円の住宅を購入し、頭金500万円+3,000万円を住宅ローン(35年返済、金利0.5%)で借りた場合…
- 毎月の返済額:約8万円
- ボーナス払いなしなら年間96万円、35年で総返済額は約3,360万円
この金額に、固定資産税・火災保険・修繕積立などのランニングコストも加わります。
さらに、「住宅ローン控除が終わる13年後」「子どもが高校・大学に進学する頃」に、家計の支出がピークに達する家庭も。
このタイミングで「教育費が足りない」「住宅ローンもきつい」となるケースが非常に多いのです。
よくある家計の落とし穴:3つのケーススタディ

ここで、実際によくある「家計設計の落とし穴」を3つ紹介します。
ケース1:住宅ローンを限界まで借りてしまった
「今のうちに広くて便利な家を…」と考え、世帯年収の7〜8倍の住宅ローンを組んでしまうケース。
住宅ローンは通っても、教育費がかかる時期に家計が赤字になり、学資保険を途中解約、教育ローンを利用せざるを得ない事態に。
→ 対策:ローンの借入額は「年収の5倍以内」が目安。教育費のピークを想定した返済計画を。
ケース2:教育費の準備が後回しに
「今はまだ幼稚園だし、教育費のことはそのうち考えよう」と放置。
気づけば中学受験の塾代で月5万円、高校・大学と立て続けに出費が増え、貯金が追いつかず教育ローンに頼ることに。
→ 対策:教育費は「子どもが小さいうち」に準備スタート。つみたてNISAなどでの積立が効果的。
ケース3:家計に余裕がなく、夫婦関係もギスギス
住宅ローンと習い事代でカツカツの生活。
「旅行も外食も我慢ばかり」「家を買ったのに自由がない」とストレスが溜まり、家庭の空気が悪くなってしまうケースも。
→ 対策:月々の支出は「身の丈」に合わせ、余裕資金を残すことで気持ちのゆとりも確保。
じゃあ、どっちを優先すべき?FPが考える「順番と考え方」
結論から言うと、「教育費を準備しながら、無理のない住宅購入をする」ことがベストです。
そのために必要な考え方を3つ紹介します。
教育費は「準備が必要な出費」
住宅ローンは「借りて、分割で払うことができる」お金。
一方、教育費は「支払い時に必要な現金」です。
特に大学入学時の初年度納付金(私立文系で約100万円〜150万円)は、入学前に一括払いが必要。
つまり、住宅ローンは支払いを分散できるが、教育費は分散できない出費なのです。
→ 教育費の方が「現金での備え」が必要という点で優先度は高いといえます。
住宅は「身の丈」で。余剰分を教育費にまわせる設計を
多くの人が住宅に「理想」を詰め込みたくなります。
しかし、教育費が必要になることを見越せば、「月々の返済を少し抑えて、教育費積立にまわす」という視点も必要です。
「広さ」より「立地」「通学のしやすさ」など、子育て世代ならではの視点で物件を選ぶのも1つの工夫です。
「教育費の見える化」と「ライフプラン作成」が必須
教育費と住宅ローンのバランスを正しく取るには、将来の支出を「見える化」することが欠かせません。
- いつ、どのくらい教育費がかかるのか
- 住宅ローン返済と重なるタイミングはいつか
- 退職金や老後資金への影響はないか
こうしたシミュレーションを行い、「買っていい家の価格」「積み立てておくべき教育費」がクリアになることで、安心して家族設計ができるようになります。
教育費と住宅、両立するための3つの具体的アクション

最後に、教育費と住宅ローンを無理なく両立するために、今からできる3つの行動を紹介します。
1. 教育費の積立を今日から始める
新NISAやジュニアNISA(2023年終了)などの制度を活用し、月1万円からでも教育資金の積立を開始しましょう。
たとえば月1万円を15年積み立てると、利回り3%で約230万円になります。
これが大学資金の一部にあたります。
2. 住宅購入前に「ライフプランシミュレーション」を行う
物件探しを始める前に、ファイナンシャルプランナー(FP)によるシミュレーション相談を受けるのが理想。
教育費・住宅費・老後費用をすべて見える化し、「無理のない家の価格帯」が分かります。
3. 家計の固定費を見直す
保険、通信費、サブスク、食費などの固定費を見直すことで、住宅購入後の「教育費枠」を確保できる可能性があります。
年間10万円以上の節約につながることも多いため、住宅購入前の準備としてもおすすめです。
まとめ:優先順位を間違えないことが、家族の安心につながる
教育費と住宅ローン、どちらも家族にとって大切な支出です。
でも、そのタイミングや支払い方法の性質はまったく異なるため、同列で考えてしまうと家計が破綻するリスクもあります。
もう一度ポイントを整理しましょう。
- 教育費は「現金で一括払い」が多く、準備が必要
- 住宅ローンは「分割払い」であるため、無理のない金額設定を
- 教育費と住宅費の両立には、早めの積立とライフプラン設計が重要